構造・ギミック
2足歩行型
図1 2足歩行型怪獣は、中のSアクターの頭の上に怪獣の頭が来ます。 なので人間の身長や、ヒーローより頭1つ高くなります。 火炎放射図1Aがある時は、その装置も頭部に組み込まれます。 目(まぶた)や口のギミック、角・牙、耳など重量が多くても
2足の直立型は格闘的な演出からも採用される率も高く ワイヤーの補助は無い事が多いので Sアクターの頭(首)で、ほとんど支えます。図1B *4足怪獣などは頭部が重いと物理的に支えきれないので ワイヤーで頭部を吊る事があります。
目や角などが光る電飾用のバッテリーは、出し入れしやすい 背中のチャックの側に入れる事が多いです。C 長い尻尾は当然人間には無いので、ワイヤーで操演しますが アップや、破壊などは手持ちで操作します。D 下あごの開閉は、自転車のブレーキと同じ仕組みのワイヤーで 足元や尻尾から出して外部で操作し動かます。 予算のある映画や近年はラジコンで操作するタイプもあります。E *ワイヤーレバーも、自転車用のタイプから 握力測定機のようなレバーまで多種あります。
火炎放射は、火種をAカメラを廻す前につけておいて 怪獣が吹くタイミングで霧状の引火液を噴出させる方法が メインです。大変に危険なのでアップで人が中に入らない状態で 撮影する事もあります。 *口の中や歯の素材も火を吐く怪獣は熱に強い物が使われます。
4足歩行型・着ぐるみ怪獣の課題
図2
4足の怪獣は足の付け根が人間の肩と腿になる為 A・Bの距離が4つ足動物より近いのが最大の欠点で 後ろ足はさらに間接が、人間は1つ少ない為(上の×) 足首が後方向き(下)になってしまうので引きずるように なってしまいます。 その為に頭部に特徴を持たせたり、残念ながら後足を映さないなど 視点が後足に行かない工夫がされます。 尻尾Cや、アゴの開閉Dは、2足と同じですがどうしても 怪獣の顔が下を向きやすく、ヒーローと目線を合わすのも 難しいので、会話する怪獣や宇宙人には向かないタイプです。
AとBが近くて、4足動物としては違和感がある姿。 パゴスやネロンガ、ダリーやアギラ、など 2足直立の相手と戦う怪獣は、特に動きを重視すると 4足なのか?後ろ足で立つ怪獣なのか?解らない事に なってしまいます。 *エレドーダス・講談社スタンプカード27番
後ろ足の足首を人間の関節に合わすと しゃがんだ状態になってしまい、歩くと前脚を 使っていない状態になって、不自然な動きになります。 *シーモンス・講談社スタンプカード243番
ドドンゴのように4足とも人間の足ならば動きやポーズは いいのですが、2体分の制作で・Sアクターも2人と予算は倍で 画面的には1体しか登場してないと、マーチャン的にも不利で 2体登場の豪華回に、同じ予算では軍配が上がってしまうのも 4足怪獣が徐々に減って行く原因の1つです。
動き重視でドドンゴタイプを作ると、サイズが大きくなるので ヒーローや背景とのバランスなどからも、スタジオサイズまで 問題になる事もあります。
1人で演じる4足怪獣の開発に、ステゴザウルスや キングザウルスⅢ世*では前脚に短い竹馬のようなモノを 図3A持つ事で型としては 後足の足首も前に向いた姿勢になりました。 *ステゴザウルス・講談社スタンプカード35番
図3 ただ、あまり敏速に動けず、片方は骨の化石で 死臭と溶解液を持ち寄せつけず 片方はバリアを張るなどウルトラマン側が 動くしか無い格闘がメインになってしまいました。 *2体は表面仕上げは違いますが芯は同じ
尻尾(長い首)
尻尾やキングギドラなどの長い首の怪獣や蛇のような怪獣の中は 骨間接のようにウレタンのセンターに、やや軟質なワイヤーや ロープを通した物が組まれ、外から吊るした操演のワイヤーで 上下左右に動くようになっています。 *予算がある場合は、センターにボールジョイントを 仕込む場合もあります。 ピアノ線を着ける位置も、長さ、太さ(形)重さで でさまざまですが、ラテックスを貼る前に何箇所か吊ってみて バランスは見た方がいいですが、完成後にどう動くかは ラテックスの厚さなどで、経験を重ねても難しく異なります。
目・まぶた
ヒートプレス加工 目の発光するタイプや、中で瞳(黒目)が動くタイプは 透明の塩ビやプラシートを、熱して加工します。 木型で目の形の押し型と、受け型を作り、熱を加えた 透明板をプレスして作ります。 *ミニチュアの戦闘機のコックピットや、ウルトラマンの目や カラータイマー、セブンのウルトラアイなども 目以外の部分や小道具などにも使われる方法です。
高山さんが使用されていた道具です。 ヒートプレスの木型なども見えます。
TVは特に、まぶたの開閉は、アップなどの寄ったサイズで フルショットでは無い事が多い為、あまりスーツアクターが 中から操作する事は無く、下あごと同じように ワイヤーで外から操作します。 テグスなどで動かし撮影する事やラジコンもあります。 また、涙などを流す場合も細いチューブを仕込み ほとんどはアップでSアクターが入らずに、水を人力で口からの 息で吹いて押し出しています。
高山さんの道具で小物などを入れていた缶です。 イカルス星人のシールが貼られています。
FRPマスク・量産型
ヒーローなどのFRPマスクは、1体だけでは無いので 石膏ではなく、今は量産の型を石膏のように 壊したりしないで、再利用が可能なシリコンなど(ゴム系)の 物を作ります。 *FRP・合成樹脂、軽量で硬化。 シリコン型も回数や、抜きで力がいる形状の物は ガーゼなど布を貼り込んで丈夫にする事もあります。
抜いたパーツは、さらに表面をパテなどで、ツルツルに仕上げられ 覗き穴や呼吸穴を空けて塗装されます。 *昔はフィルムだと銀が反射率が高い為 人間と一緒に映る等身大があるウルトラセブンやミラーマンは *ハレ止めをハケで塗ったりして意図的に光沢を 下げてる物があり、照明によってはかなり顔が黒ぽく見えます。 *ハレ止め・照明さんが使う液体(今はスプレーもある) ガラスや、ふすまの縁のウルシなどの反射を抑えるのに主に使う。 FRPは石膏型だと抜くと言うよりも、もはや壊すと言う 方法を採る事が多いので、1点モノで失敗が無いor時間に 余裕があれば壊す方法でも抜けます。
ヒートプレスで作った目やランプなどをマスクに着け 電飾が付けられます。そのスイッチもマスクに付けられる事が多く 電源(電池)は、スーツの脇などに入れ マスクをウエットスーツの体に接合して完成です♪ セブンは、格闘の動きと等身大でのロケでの使用が 多く想定されたので、背中のジッパーの開閉から近い 交換に便利な肩胛骨の近辺に入れてあります。 *目などのスイッチは耳の中や後などFRPの固い部分に つけられます。アトラクではレバー操作をSアクターがする事も あるので、レバーが大きく(長く)付けられる事もありました。
昔のウルトラセブンのような電飾はフィルムなので 出る雰囲気があり、ビデオで撮影される場合はサイズや 角度では黒点になったり、輪が映るなど同じような 再現は不可能に近いです。
ウルトラマンタロウのマスクは、セブンの型を元に 原型を起して作られています。*角など別パーツで後着けです。
レオのNGマスクから産まれたバルキー星人。 *ボディもマグマ星人に予定されていたモノが 急なタロウの延長で、改造された為、マグマ星人は 銀色になり、後にババルウ星人で金に戻ります。(^^;
この頁は、あくまで参考で全てに該当するものではありません。 作業をされる方は、換気や、火器類、手袋や マスクなど、充分に体や廻りの環境に注意し、製品は取説に従い 自己責任で行なって下さい。
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制作行程
デザイン画
デザイン画は脚本や演出側の意見を考慮して 火を吐くとか、ヒーローのパンチが効かない 固い体にして欲しいなど、前後の怪獣と類似して ないか?色や形、特徴なども検討され安全面や 予算面も考え決定されます。 格闘もSアクターや殺陣師の意見で、武器や 怪獣の手の素材なども、数種用意したり撮影時間 など現場の意見も、この段階から考慮します。 *予算から前の怪獣を改造する事や尻尾がデザイン画 から無くなる事もあります。
検討用モデル
デザイン画から20~40cmほどの検討用モデルを 粘土で制作します。 *完成品と人間の身長から計算しやすいように 星人が25cm、怪獣は30cmが多い。(人間を20cm) 立体になってのラインやボリュームを粘土を 削ったり、追加して照明により陰影を 煮詰める事と、制作方法の打ち合わせに 主に使用され、体の制作上の分割箇所を 前後or左右に分割して作る方がいいか? 時間のかかる部分(乾燥なども含め)など制作時間と 予算で、担当者や会社まで別ける事もあります。
A・中に入るSアクターの体型を元に芯を用意します。 *金網などを使う場合やカポックを使う場合などがある。 B・その上に粘土(殆ど油粘土系)で原型を制作します。 C・その原型に石膏をかけ全体を覆います。 この時検討モデルの時に決めた分割部分にアルミシート をハサミ込み乾燥したら分割しやすくします。 *石膏を直接かける所と大きい部分は布を石膏に浸して割れを 防ぎ効率を良くします。
▲分割ラインは、プラ板やアルミ板、アルミホイルなどを使用し テープ類なども使用します。 石膏の厚さも、制作する対象物や ラテックスの特性で何センチとは言い難いのでテストを重ねて下さい。 ただ、型から離脱する時に形やトガッタ所は抜く角度と力の掛け方が 難しいのであまり薄いと型が破損しやすい場所です。 具体的にアドバイスしたい所ですが、経験がモノを言う場所の1つで 形が千差万別あるのでテストを重ねて下さいとしか言えません(^^;
凹モールド(型)
石膏を分割したモールドの内側に皮膚になる *ラテックスを塗ります。*この場合ゴム系の液体樹脂 この段階でべースになる色を調合する場合も あれば、完成後に全部塗装する場合もあります。 一般的には型ですが、現場では型と言うと他の モデルなどと混同しやすいので凹モールドと呼ぶ事が多い。
ラゴンの石膏型
▲怪獣などのツルツルの表面ではない時は刷毛塗りで 動きや、アクション、攻撃、火薬などの用途を 考慮して厚くする時は繰り返し塗ります。
▲ラテックスは粘度で、時間や厚さを調整できますが 使用するメーカー、品物で異なりますので研究して 下さい。 ラテックス自体の色も様々な物があり 厚さ(粘土)の適正もあります。 ラテックスに初めから色を着けるのは、水彩やアクリル絵の具 などで出来ますけども、多種多用なので詳しくは 販売店やメーカー、各自の実験にて試してください。
高山さんが実際に使用した凹モールド ウルトラセブンのガンダーの物と言われています。 *高山良策・ウルトラでは1期や帰マンの怪獣数点を 制作した怪獣制作のパイオニア的存在の1人。
▲ラテックスは石膏型から抜くのは、それほど難しくは ありませんが、表面に細かい凹凸があるものなどは 離型剤を使用した方がベターです。 プロは形状の変化に、布の裏打ち(内部混入)をして強度を 上げ歪みを抑えますが、伸び(関節など)の特性が低くなる ので経験が必要な技です。
高山さんの作業場に置かれていた缶 側面に初ウルトラマンが見えます。
芯・ボディ
現場では「芯」と呼びますが、だいたい*ウレタンで Sアクターの体型に合わせて作り、その芯に 凹モールドから剥したラテックスを貼って行きます。 *少し硬化なスポンジ。
分割したパーツの結合部分もラテックスで 繋ぎ合わせボディは完成です。 動きによっては、関節部分は薄くしたり 別素材の布などを使用する事もあります。
手や足の部分は、別に作る事が多く 5本指タイプは特にですが、近い制作の 別怪獣の物は同時に作り、ストックしておく 事もある部分です。 爪は主にFRPで制作して着けますが、演出的に 軟質な素材の爪を作る事もあります。 5本指では無い怪獣は、ムチなどはゴムが多く ぺギラのような羽根の怪獣は布で作る事も あります。
▲ラテックス乾燥は、晴れた外でもいいですがライトなど 照明器具(距離に注意)などで、熱を加えるとはやく また、加熱(80~100度)した方が強度が増します。 細部のラテックス補修もドライヤーなどが有効です。
今も残るゴメスの角もFRP。
ウルトラマンダイナに登場したデマゴーグの手 *左奥が格闘用なので爪がラテックス製
ウルトラマンティガで人気のキリエロイドの手は 指で芝居や表情がつけられるように 工夫されていてキャラの魅了を増している。
ウルトラマンダイナに登場した姑獲鳥の羽根は 凄くよく出来ていて、いい意味で生々しい。
頭部内側
頭部のラテックスを貼る前に、頭部にある ギミック(アゴの可動・火炎放射・瞼)などを仕込 目の電飾や口の中のベロや歯、牙なども 後では作業が困難なので、先に作業します。 また火を吹く怪獣はCGが無い時代は、生の火を 噴射していたので、口の中は引火しにくい素材に 変更されます。 *歯はほとんど1本単位で植えます(^^; 首長の怪獣や極端に重い頭部の怪獣は ワイヤーで補助上から吊るし補助しますが ほとんどはSアクターの頭で支えます。 火炎放射の装置や大きな角や耳など があるとかなりの重量になります。
完成
角などを着け塗装をして、Sアクターに入って もらい、動きや、もう1度呼吸穴・覗き穴の位置や 大きさなどを確認して完成です♪
▲乾燥後の表面に少し粘着感があるラテックスもありますが ベビーパウダー等の粉をつけて粘着を消します。 着ぐるみ的にはお薦め出来ませんが怪獣なら 土でも代用は可能です(^^;
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