合成の基本・生合成
8mmや16mmで、特撮をした事のある アマチュアの人は、経験あると思いますが? レンズの半分(上下・左右)を、黒いモノで覆い撮影したら その分を巻き戻して逆側を覆い、撮影する合成方法です。 左右に同じ人が向かい合い話すトリックなどでもよく使用されました。
このマスクの境が空いても重なりすぎても よくなくこの部分はプリンターを使用しても高い精度が求められます。
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セブンのMAX号のカットなども原理は同じです。 下は実景で上はミニチュアです。*あくまで原理としての例です。 プロの場合は生では元画を両方損失する可能性があるので ほとんど使用せずオプチカルで処理しますが プリンター上では同じ事をしています。 中には生合成の美しさをリスクより尊重して好んで使う方も昔はいました。 Sスピルバーグのレイダースで後半島に向かう 潜水艦の合成も、まったく同じです。
ウルトラセブンのビデオシーバーの合成や作戦室のモニターを 生でした事があるそうですが・・・ 確かに作り物の腕などで完全に固定すれば四角窓の マスクで可能ですが、ブースカではなくセブンでやってるのは凄いです。
マット画合成
無反射ガラスに絵を書いてカメラの前に置いて撮影する技法です。 これも生合成の1つで、現場では黒だけのマスクを 描きプロジェクターで合成する場合もあります。 ウルト警備隊の作戦室に置いてあるので見た事が あると思いますし劇中モロボシダンがその絵を描いてる 芝居までがあります♪(^^; 基本的にマスクラインのように、ハッキリとした境が 無い方が逆にいい効果が得られます。 ネロンガの古井戸を覗くフジ隊員の廻りや セブンの勇気ある戦いの大きな穴に立つアンヌと隊長の バックショットの左部分もマット画ですがオプチカルで生ではなさそうです。
ウルトラマン怪獣殿下・前の殿下とお母さんの会話で 目の前の道の奥が空想の絵になるのもマット画で ラインが解りにくいのが見てとれます。 現在のハリウッド映画でも、まだ使用してはいますが 年々CGに移り変っている技術です。
なぜだか昔から地割れや穴などによく使用されます。
スクリーンプロセス★プロジェクター合成
リア・プロジェクション
スクリーンの後から反転したフィルムを 映写してそれを撮影する方式です。 主にカメラとスクリーンの間に入る人や モノなどの面積がフレーム的に多い場合に 適していますが、例のイラストとは違い かなり映写機とカメラの距離(場所)が必要なのが短所です。 ビートルから見たレッドキングなどや コックピットなどの面積があるものに使用 されますが、1クール目には多少見れますが あまり使用されない合成でした。
フロント・プロジェクション
カメラと映写機が一体になった特殊な装置を使用します。 人などの少ない面積のモノが間に入るには 適していますが、当然イラストの例ならば 背中に怪獣の画面が映りますから、横から 強いライトをスクリーンには漏れないように当てて消します。 なので背中の真中が暗かったりします。(^^; カメラ前にハーフミラーを置いて背中などの 間に投影される画面を消す場合もあります。 ケムール人とパトカーの走行カットや ジラースに踏み潰される博士に迫るカット、 キングジョーにライトンR30を撃つ警備隊に セブンがキングジョーを向けるカットなどで使用されています。
ウルトラQゴーガの像のオープニングで 倉庫が爆発する所をオープンカーで バックして逃げる日活の小林旭ばりのカットが ありますが、Qちゃんの頭では当然のごとく こういうカットはプロジェクションでやる所ですし 007でもコレは多分プロジェクションでやる事だと思います。 しかし、これは移動マスクで合成されていて その迫力とカッコよさに驚きました。 *移動マスク・右項目参照 多分この制作~放映時で、このカットを依頼された 特撮マンはほとんどプロジェクションを選択すると思います。 逆にこのカットを見た映画人は、オプチカルP1200の 凄さに衝撃を受けたと思います。 プロジェクション合成は英二さんが 長年力を入れ開発してきた合成技法で T宝特技課のレベルは海外の監督が来ても 驚くほど素晴らしいプロジェクション技術を持っていました。 このカットのようなマスク合成が 出来てしまっては、その迫力は段違いですが 手間や予算はプロジェクションの数倍かかるのが短所です。(^^;
OL(オーバーラップ)
合成の種類の1つとも言える技法ですが 特撮でなくても、普通の映画たドラマで多用されています。 2つの画が重なる。もしくはAにBが少しずつ重なる場合や その逆に消えて行く場合などの、バリエーションがあります。 回想シーンや、幽霊(宇宙人)など透けて見える場合いによく 使用されます。 ウルトラセブンの最終回で、空に走るモロボシダンの顔が 浮かぶのがOLです。ラストの飛び人形もOLなので死んだ 事なのか?と、中学くらいでは思ったり合成の手抜きとも 思いましたが、死んだも含めた解釈自由な合成と強引に 思ってたのですが・・・帰ってきました(^^;
エリアル合成 これは、オプチカル合成の元になるような方式で ベースの画像を複写する工程で、合成していきます。 作業が比較的簡単で、位置やタイミングのズレが無い(少ない)為 東宝映画での光線などで大活躍した合成方法です。
ゴジラの背びれが光るのや、キングギドラの怪光線 などなど、ほぼ固定した光線銃の先から出る合成よりも 暴れまわる怪獣の動きに、合わせたズレが無い合成が可能でした。 エリアルとは、ガイアの基地のエリアル(空中)と同じ意味で 投影した画像を別角度や、反対から撮影する間に合成したいものを ハサミこみ再記録(撮影)する工程での合成です。
簡単な原理を図にすると、映写機から画像を映し 凸レンズの反対からキャメラで、撮影する間に 図の赤にセルなどに書いた光線や、タイトルなどを置き撮影します。 ライトは遮へい板などでレンズに、当たらないようにします。 なぜ平面ではなく凸レンズかと言うと、映写機も 撮影側のレンズも凸だからです。 *身近では虫めがねが両側凸レンズです。
セルを黒塗りして雄雌両方のマスク作り、雄マスクで撮映したフィルムを 巻き戻し、今度は雌マスクを撮映すればマスク合成も出来ます。 ワイプや透過光なども出来、洋画などの字幕スーパーも入れられます。 工程や時間精度の、問題さえなければオプチカルプリンターと 同じ作業は、ほとんど出来るか?出来ないか?だけで言えば出来ます。(^^;
ちょと上級編 レンズは、正しくはコンデンサーレンズと言いセルやマスクを 置く為にプロが使うものはフレーム的には、四角の凸レンズです。 片凸レンズを向かい合わせ画面周辺の映写機光源ムラや色滲みを 押さえられます。 光軸の調整やフレーミングの調整が出来ればアマチュアでも かなり高度な合成が可能な技法です。
影絵の合成
昔は、こんないい台は無かったのですが フィルム時代の後半には、いろいろ改良され データをインプットする事で同じ動きを台が 何度もしてくれる便利な物が出来ました。 オープニング影絵も、カメラは上に固定され ブルーバックで撮影し、影が上手から下手や ズームで小さくなるなど動きを台で演出します。 その後、ブルーの部分に素材を合成し、さらに クレジットで役者やスタッフ名を合成します。 *今は本当のアニメーションもデジタルスキャンに なってしまったので、こんな大袈裟な撮影台で 静電気とホコリと格闘しながら1枚1枚撮影する事は なくなり、撮影所でも姿を消したり倉庫の隅に 追いやられてしまったフィルム時代の撮影機材です。
ウルトラマンの頃には、飯島監督の指示で 煙にカラーフィルターをチェンジしたモノに 絵を落として行くなど、かなりアナログな工夫で撮影されていました。
レンズフィルター(合成)
レンズフィルターやレンズ前に設置した板に 直接描いたり、貼ったりした画面造りも一応合成の仲間です。 マット画とは少し違いますが、コックピットからの 主観映像としてカメラ前にコックピットの 窓枠の黒マスクを置いてカメラを、操演さす撮影 主観の川北と呼ばれた川北紘一さんの 技術なども2期では開発されています。
合成の種類
合成はインカメラとラボラトリーに大きく分かれます。 インカメラ方式 マット画・ミラー・スクリーン(スプリット) ラボラトリー方式 オプティカル・エリアル・トラベリングマット スクリーンプロセス
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オプチカル合成(光学合成)
オプチカルプリンターとは?
原理としては、ポジフィルムをネガフィルムで複写するものです。 画ブレを防ぐためコマごとに高い精度で 正確に維持されなければならなく レンズは、35mmのような小さなフレームを複写するため 最高性能光学レンズが必要で、複写の際の画質の劣化と フィルムによる画ブレをを防ぐためにポジ ネガ共に微粒子でネガ目のインターミィディエイトという 特殊なフィルムを使います。 オプチカルプリンターはプロジェクター1に対してキャメラ1 のシングルヘッドを基準に、 エリアルイメージプロジェクターを 追加したダブルヘッド、 さらにビームスプリッターを使用して プロジェクターを追加したトリプルヘッド または4台のプロジェクターを使用したクワッドヘッドの 4タイプがありプロジェクターの台数が増える程 複雑な作業が可能になります。 英二さんで有名なオックスベリーのオプチカルプリンター1200は 4ヘッドを搭載した最も最初の高性能プリンターでした。
*ウルトラセブン11話で基地の機械として登場しています。
固定マスク合成
1・動画と固定画
1・動画と固定画ベース画の中に怪獣を固定マスクで 合成してみます。
建物の後に立たせるとしたらば 建物の部分を覆う固定マスク1種雄雌2枚を造ります。 *生合成の例の複雑なラインです。
マスクの外に特撮セットで撮影した 動画をはめ込み完成です。
2・動画と動画
2・動画と動画 有名なホーク1号の発進カットを 例にしてみると、模型の動く動画と手前の人物も動画です。
このミニチュア部分と別ける赤ラインの マスクを、画の下のマスクと画とは逆の上が黒の マスク雄雌2枚を造ります。
有名なミニチュア部分のイラストですが この下部分には作戦室で撮影した部分の 人物入れ込みの画を入れるので1度に プリントするには2ヘッド以上のプリンターが必要です。 *光学の中野さんはTBSでも撮影してる との事なので窓枠など、もう1枚元画があった のかもしれませんが、他の似てるカットとの 記憶違いかもしれません。通常は2枚でOKです(^^;
プリンターでプリント(複写)した画を 合成したベースを、造る技法もあります。 例は、ビックサイト・砧公園芝・噴水の 3つの画を1つにした所に、宇宙人を はめ込んでいます。歩く時にもブルーバックを 使いますが、元画との角度調整が必要です。 プリント(複写)は、バルタン3代目のカットや Aのベロクロンの学校など建物を、切ったり貼ったり 怪獣に合わせた構図を作り出すのにも使用されています。
移動マスク合成・ブルーバック合成
トラベリングマット合成とも言います。
今度は、巨大化などマスクが固定では 無理な場合のマスク合成の例です。*例は静止画ですが(^^;
ここで有名な?ブルーバックを使います。 ブルーの前でセブンに巨大化のポーズを 演じてもらいズームや移動でフレームに対する セブンのサイズを変動させるフィルムを撮影します。
白黒フィルムの青が抜ける特性を 生かして逆にセブンの動きの部分のマスクを 造ります。3秒なら72コマ(枚)のマスクが完成します。 これを手作業で描いてると制度も落ち時間もかかります。
72枚の変動マスクを背景に被せて、そのマスクの 反転マスクでブルーバックで撮影した実写のセブンを 合成すれば完成です。 3秒でビルの高さまで巨大化します♪>長すぎ(^^;
アニメエフェクト合成
ウルトラビームを怪獣に発射!の光線は昔からあるカミナリの 合成と同じで、手書きのアニメをマスク化して 6コマとか8コマとか指定して合成します。
後から光を透光する場合もあります。 *色を着けて赤く透けた熱線砲などでも見られます。
ウルトラセブンは、よく発射ポーズを構えた瞬間に カチッとコマが固定する瞬間があります。 すぐにビームに目が行くのですが・・・(^^;
アニメに使用する撮影台。 *上にあるのがカメラBOXで下の台は左右、前後などに動く。
TVではあまりやりませんが、1コマを焼いた 位置決めをベースに光線の透過光のマスクを設置します。
光線の部分だけを抜いたマスクで下から光をあて 動いてるように2.3枚の複数のマスクをコマ撮りするか ラップやグリスなど透明系の波板などを黒マスクの下で 動かす事で光線が動いて照射されているのを表現します。 *ウルトラマンAやタロウなども、色フィルターや素材フィルムを 抜け部分に入れ込んだり、抜け部分にさらにもう1度素材 フィルムを合成して、カラフルな光線を表現していました。 本当はエリアル合成で走り廻り動きながら額や手先から 光線を繰り出すセブンが表現できたらすごく 動きのある作品になるだろうな~などと思うのですが やはり週1の作品では、難しかったのでしょう(^^; その後に、大怪獣キングギドラの自由に動き回る3つの口からの 破壊光線を見て、セブンのカチッとコマが固定するのを 比べてしまうと本編(映画)や円谷英二さんのケタ外れの 凄さを感じます。 脚本やアイディア、怪獣のデザインなど素晴らしい部分は ウルトラシリーズにも、沢山ありますがメインの特撮と言う 部分をシンプルに見てしまうと、当り前ですけども 当時の世界でTOPクラスの円谷英二の大特撮はギドラが 暴れるだけでも複雑な操演に加えモスラ、ゴジラがスクリーンで 暴れる姿と、数コマの焼きつけに苦労してるエメリウム光線の差は 単純に予算や時間の差なのかもしれませんが 特撮の神様の力の差を実感します。 セブンもデジタルの今ならなんとかキングギドラ以上の 凄い光線怪獣(星人・円盤)と停まってないで、交わしながら光線で 反撃するウルトラマン達(セブン)を見てみたいものです♪(^^;
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